ギャルとメガブス
詰まることも間違えることもなく、曲のテンポをしっかりと守ったまま、俊くんはまるで当然のことのように、その曲を弾き切った。

最後の音が静まると、俊くんは幾分すっきりしたような表情で、私を見上げた。


「……結構、楽しかった」

「すっごォい!」


私は感激して、満面の笑みで両手を叩いた。

拍手の音は、静けさを取り戻した音楽室に反響して響いた。


「凄い、凄い! 

俊くん、私なんかよりもずっと上手、ううん、音楽の先生よりも上手だね!

テレビの演奏会で見たのと、おんなじに聞こえたもん」

「そんなことないよ」


俊くんは、首筋まで真っ赤に染めて俯いた。


「……ねぇ、みいちゃん」

「何?」

「ここで、ピアノ弾くの、楽しい?」

「うん」


私が頷くと、俊くんは顔を上げた。


その頬はまだ赤かったけれど、とても嬉しそうだった。
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