ギャルとメガブス
効果は呆れるほどにてき面だった。

ちょっとファッションに気を使っただけで、男の子たちにはちやほやされ、女の子たちからも一目置かれるようになった。



いつの間にか、キョウコと並んで、私はクラスの人気者になっていた。

そのポジションは、とても心地良かった。



ああ、ミキちゃんは、毎日こんな気分だったんだろうな……。



私はクラスの人気者になるのと反比例し、ピアノを弾かなくなった。

それまでの根暗でメガブスだった私には、ピアノしか縋れるものがなかった。



しかし私は今や、もっと派手で刺激的な、たくさんのものを手に入れたのだ。



私は徐々に、ピアノを忘れていった。



五線譜も、引き出しの奥にしまったまま、出さなくなった。

俊くんの顔も、いつの間にか薄らぼんやりとしか思い出せなくなっていた。
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