蝶の行方は
土「ったく…そんぐらいで逃げんなら、最初から出しゃばんなよ。」
女「あの…」
土「あ?あぁ、お前ケガは無かったか。」
絡まれていた女が、俺を見上げる。
艶のある黒髪を器用に結い上げ、梅の飾りの付いた綺麗な簪を挿している。
くりっとした大きな目は、強い意志を持っているように見える。
女「助けていただき、本当にありがとうございます。
何かお礼をしたいのですが…」
土「礼なんていらねぇよ。」
女「そういう訳にはいきません。
あたしにできることなら、なんでもしますから!」
って言われてもなぁ…
土「…なら、玉乃屋ってとこに連れてってくれよ。」
女「玉乃屋って茶屋のですか?」
土「あぁ。」
女「あたし、そこで働いているんです!
よければ、ご馳走させてください!」
土「じゃあ、頼む。」
女はニコニコしながら、道を歩き始める。
俺は、その後ろをついていった。