愛させろよ。
俺は最後に言った。

「何かあればお聞きしますが」

先輩は、少しの沈黙の後、言った。

『ねえ相原……悪いんだけど、私の楽器を持ってきてほしいの』

「先輩の家まで、ですか」

『そう。面倒なこと頼んでごめんなさい』

「いいえ。どこですか」

先輩は、そこまで遠くない地区の住所を言った。

『お願いします。すみません』

「大丈夫です。では」

先生の姿をドアの影に見つけて、俺は慌てて電話を切った。
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