愛させろよ。
俺は、真っ白な部屋を見回して言った。

「先輩、この広い家にひとりなんですか」

「そう、でももう慣れっこよ。桐谷蘭は、一年の半分くらいは家にいないもの」

「半分も、ですか?」

「ええ。演奏旅行でどこか行ってることもあるし、終電逃して帰ってこないこともあるから」

俺には想像もできなかった。

こんな家にぽつんといることが、どんな気分なのか。
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