愛させろよ。
桐谷先輩は、今度はしっかりした声で言った。

「保護者面しないでって言ってるの」

その声音は静かだったが、何かが込められているように聞こえた。

蘭さんは少しもひるまずに言った。

「だってわたしは親よ」

桐谷先輩は言った。

「生物学上はね。でもそれは何も意味しないわ。あなたは私について何を知っているっていうの?」

「何も知らないわ。別の人間なんだから当然じゃない」

そんなことを言いながらも、蘭さんの笑顔に揺らぎはなかった。

俺は密かにおののいた。
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