愛させろよ。
先輩は不思議そうに俺を見た。

俺は言った。

「先輩が生まれてなかったら、蘭さんはクラリネット奏者になってませんでした」

「え……どういうこと?」

「先輩を身ごもったから、男遊びから抜け出してクラリネットに目を向けることができたんです」

先輩は目を見張った。

「どうして、相原がそんなこと……?」

「入院中、蘭さんがお見舞いに来てくれたんです。その時に聞きました」

先輩は言葉を失ったようだった。
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