愛させろよ。
楽器を置くと、俺と桐谷先輩はどちらからともなく例の場所に向かった。

俺たちは地面に並んで座った。

「私たち、ここに何回来たんだろう」

「もう数えきれませんね……」

初夏の風がグラウンドを吹きわたった。

先輩の髪も揺れた。

「怪我させちゃったこともあったわね」

「ああ……でも今では、怪我してよかったと思ってます」

先輩は不思議そうな目で俺を見た。
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