二人は甘い初恋関係

「律矢、お前…どこ見てんの?」


「い、いや…何でもねぇ。」


首を傾げる兄貴に取り合うことなく、鍵を開けて家の中へと入る。


真っ暗な室内。


父さんは1年前から海外への単身赴任、母さんは仕事の帰りがいつも遅い。


兄貴は大学生で、普段は離れた場所で一人暮らしをしている。


まあ、こうして突然…家に帰って来ることがあるけど、それは…時々のこと。


だから、俺が帰宅すると誰もいない…っていうのが、殆ど毎日の光景だ。


「あ、そうそう。夕飯…ついでだから律矢の分も買ってきたぞ?」


「サンキュ。つーか、兄貴…相変わらず帰って来るのが突然だよな。」


「今日は、こっちの友達と会うことになってたからさ、その流れで家に泊まろうかと思って。」


「ふーん。」


廊下やリビングの明かりを点ける兄貴に気のない返事をする。


さてと、とりあえず…制服を着替えるか。


2階の自分の部屋に行こうとして、階段のところにやって来た俺を、兄貴が何やらジーッと凝視した。



「律矢、なんか…お前の顔、赤くね?」


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