二人は甘い初恋関係
「良かった、間に合って…。」


フゥ…と息を漏らす水城君。


村澤君に対する低い声と冷たい雰囲気は、嘘のように消えていた。


「み、水城君…。あのっ、出来れば…この態勢は恥ずかしいから、離して欲しいんだけど……」


周りに人はいないけれど、抱きしめられた状態なのは、とても恥ずかしい。


消え入りそうな声で訴えると、水城君は慌てて私から離れた。


「ご、ごめん…。」


「うん…。」


そのあと、沈黙する私たち。


なんとなく、流れる気まずい空気。


いたたまれずに俯いていた時、突然…水城君が私の手を引いて空き教室の中へと入った。


「えっ…?」


どうして…?


理由が分からず戸惑う私を、水城君は見つめた。


「小春川、なんで…さっきのヤツと、この教室に入ろうとしてたの?」


< 242 / 322 >

この作品をシェア

pagetop