二人は甘い初恋関係
「そうだったのね…。迷惑かけちゃって、ごめんなさい…。冷却シートも風邪薬もあるから大丈夫よ。あっ、良かったら…お茶でも飲んでいって?」
「あっ、いえ…。長居するのも申し訳ないので、俺は…帰ります。」
「そ、そっか…。それじゃあ、今日は…本当にありがとう…。」
お辞儀する小春川のお母さんに、俺も頭を下げた後、ドアを開ける。
エレベーターホールのところまで歩いて来た時だった…。
「水城君…!」
呼ばれて振り向くと、小春川のお母さんが駆け寄って来る姿が映った。
「ど、どうしたんですか…?」
俺、何か忘れ物とかしたんだろうか…。
いや、でも…バッグはちゃんと持ってるし…。
不思議に思っていると、小春川のお母さんは小さな手提げの紙袋を差し出した。
「これ、パート先の近所にあるパン屋さんのパンなんだけど、生地がフワフワで美味しいの!何種類か入ってるから、良かったら食べて?」
「あ、ありがとうございます…。」
恐縮しながら受け取る。
そんな俺を見ながら、小春川のお母さんは…また嬉しそうに微笑んだ。