二人は甘い初恋関係
「今日は、本当にありがとうございました…!」


少し声は上擦っていて肩は小刻みに震えている。


緊張…してるフリ?


疑念を抱きつつ、隣の席のことでお礼を言う小春川に言葉を返す。


大したことしたわけじゃねぇから、って。


その時、小春川はフルフルと小さく首を横に振った。


「そ、それでも…私は嬉しかったんです。女の子が隣の席でホッとしたので…。」


フワリと浮かべた、ほのかな笑顔。


その表情には安堵感が溢れていて、俺は思わずジッと見つめてしまった。


本当に、隣の席が女で嬉しい…って感じだ。


今まで、男が苦手だと嘘ついてた女たちとは全く違う反応。


演技…じゃなかったのか…。


小春川、マジで男が苦手だったんだな…。


そう確信したら、今の今まで疑っていたことに罪悪感を抱いた俺。


気まずさゆえに、髪をクシャクシャと掻いた。


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