ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】
仕方がないから足を止めて振り返った。

女は半身を起こして、相変わらず俺を睨みつけている。くだらないバトルをまだ続けんのかよ? さっきの衝撃はスルーですか、そうですか。


外は騒々しい。悲鳴やら喚き声やら泣き声やらが飛び交っている。大パニックなのは間違いない。見なくてもわかる。


「次会う時は法廷だ。俺は逃げも隠れもしねぇよ」

一方的に早口で言い切り、女が口を開きかけるも、逃げるようにその場を後にした。


逃げ惑う群衆の流れに逆らって、駅のホームへと戻った。

そこには、当たり前だけどさきほど臨時停車した8両編成の列車。その最後尾の車両が、ごうごう音を立てて燃えていた。


不審物? 犯行予告?

どっちかわかんねぇけど、臨時停車はそういうことだったのかと妙に納得。

故障ぐらいで、乗客全員降車させねぇよな、多分……。


「下がって! 危険だから下がってください!」

命知らずの野次馬たちに、駅員数人が必死で呼びかけている。彼らは、携帯電話を燃え盛る車両に向けて、どうやら写真か動画を撮っているらしい。


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