ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】
「お前ら死にてぇのかよ? 爆弾、一つとは限らねぇぞ!」

頭の緩い若者たちに向かって、大声で叫んだ。ようやく身の危険を自覚したのか、彼らは大慌てでその場を離れる。


残された駅員たちにも、

「あんたらも。後は消防と警察の仕事だ。早く避難しろって」

数メートル先の彼らにギリ届く程度の控え目な声量で伝えれば、

「あなたは?」

と、そのうちの一人が訝しげに問う。


「もちろん俺も、安全な場所へ避難する」

ニッと、とっておきのスマイルを見せたつもり。


けど訊ねた駅員は、眉間に皺を一層深く寄せた。

「そうではなくて……」


ああそっちか。俺の身分の方か。

ようやく彼の問いの真意に気付き、再び身分証を取り出そうとジャケットの内ポケットを探る……が、

ない! 身分証がいつもの場所に入ってない!


慌ててサイドポケットとかジーンズのポケットとか、手当たり次第に手を突っ込んだり上から叩いたりしてみるけど――

ない! どこにもない!


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