ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】
たまらず高広が那智に向かって言った。
「お前まさか……そんなんでこの窮地を何とか乗り切れるとか、本気で思ってねぇよな?」
「はぁ? 疑う余地なく本気だよ」
那智は間髪入れずに即答。高広は体内の空気を全部吐き出すかのごとく大きな溜息をつくと、
「周りを見てみろよ」
当然那智は把握しているはずだが、念のため促してみる。
「四方八方敵だらけって言いてぇの? そんなの百も承知だよ。たかが数人の敵に取り囲まれたのが何だってんだよ、こっちは――」
言いながら右手に握っていた箸は放り投げ、目の前の初老の額に強烈な頭突きをくらわす。不意打ちをくらった男が突然の衝撃と痛みに反射的に目を閉じたその一瞬の隙に、彼の懐から銃を抜き取った。
右手には初老の男から奪った銃、左手にはその側近から奪った銃。
「二刀流だぁ!」
自信満々な叫び声と共に、振り向きざま二丁拳銃を構えながら、机の上から滑るように降り立つ那智。
『ばかやろう……』
その直前、高広は那智に向かって走り出していた。
那智の放った銃弾が店の天井に小さな穴を開けた。
那智は、高広に押し倒され床に背中をしたたかに打ち付けた。那智は一瞬痛みに顔を歪めるが、すぐに覆いかぶさるようにして自分と向き合っている高広に、
「なに余計なことしてくれてんだよ! 邪魔すんなよ!」
食ってかかった。
那智の背後に初老の男が居たため、周りの男たちは無暗に発砲できずにいた。
那智は組み敷かれたまま高広の胸倉を掴んで自分にその顔を引き寄せると、
「せっかくのチャンスを台無しにしやがって」
高広だけに聞こえる小声で悔しそうに呟いた。
「ごめん」
高広も小声で謝る。
「謝ってる暇あったら他の策考えろ」
「お前まさか……そんなんでこの窮地を何とか乗り切れるとか、本気で思ってねぇよな?」
「はぁ? 疑う余地なく本気だよ」
那智は間髪入れずに即答。高広は体内の空気を全部吐き出すかのごとく大きな溜息をつくと、
「周りを見てみろよ」
当然那智は把握しているはずだが、念のため促してみる。
「四方八方敵だらけって言いてぇの? そんなの百も承知だよ。たかが数人の敵に取り囲まれたのが何だってんだよ、こっちは――」
言いながら右手に握っていた箸は放り投げ、目の前の初老の額に強烈な頭突きをくらわす。不意打ちをくらった男が突然の衝撃と痛みに反射的に目を閉じたその一瞬の隙に、彼の懐から銃を抜き取った。
右手には初老の男から奪った銃、左手にはその側近から奪った銃。
「二刀流だぁ!」
自信満々な叫び声と共に、振り向きざま二丁拳銃を構えながら、机の上から滑るように降り立つ那智。
『ばかやろう……』
その直前、高広は那智に向かって走り出していた。
那智の放った銃弾が店の天井に小さな穴を開けた。
那智は、高広に押し倒され床に背中をしたたかに打ち付けた。那智は一瞬痛みに顔を歪めるが、すぐに覆いかぶさるようにして自分と向き合っている高広に、
「なに余計なことしてくれてんだよ! 邪魔すんなよ!」
食ってかかった。
那智の背後に初老の男が居たため、周りの男たちは無暗に発砲できずにいた。
那智は組み敷かれたまま高広の胸倉を掴んで自分にその顔を引き寄せると、
「せっかくのチャンスを台無しにしやがって」
高広だけに聞こえる小声で悔しそうに呟いた。
「ごめん」
高広も小声で謝る。
「謝ってる暇あったら他の策考えろ」