ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】
「この肉、無駄じゃねぇってんなら、どんな活用法があんのか言ってみろ」

にやり、不敵な笑みを浮かべた髭面は、憎たらしいほど男前。

非常に面白くない。俺、散々なめにあって、チョー不機嫌なんです。


「そんなんしたら、誰でも摘まめるわ」

カッターシャツを肘までたくし上げた毛むくじゃらの腕を払い除け、同じように運転手の脇肉を摘まみ返そうとした。が、カッチカチに硬いそこは弾力皆無で、俺の指先からつるんと逃げた。


「今絶対、力入れただろ?」

「入れてねぇよ。絶賛リラックス中だわ。てめ、運転の邪魔すんなら降ろすぞ?」

「仲がいいんですね」

後部座席から掛けられた声に、ハッとして振り返る。シートの真ん中に、足を揃えてお行儀よくチョコンと座っている若い男。目を細めて穏やかに微笑んでいる。

落ち着いたブラウンの髪はふわふわしていて、一層柔らかい印象を受けた。濃いグレーのスーツ姿で、刑事というより就活中の学生に見える。


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