ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】
「そう言えば、この人誰?」

訊ねれば、すぐさま谷口さんが、

「新入りだ。俺の相方がヘマやって異動んなったから、その穴埋めにな」

どうでも良さそうに答えた。


「ヘマなんかやってねぇし」

「死にかけただろ」

「あれはヘマじゃねぇよ」

「本当にお二人って仲が……」

「良くねぇよ、何回も同じこと言うなって」

後部座席を再び振り返って、乱暴な口調で言い放った。個人的に、しつこい男は好きじゃない。


「すみません」

露骨に凹んだ顔をして見せ、若い男はしゅんと俯く。


「いや、俺もちょっとキツい言い方し過ぎた。ごめん」

個人的な好き嫌いを態度に出すとか、大人げなかったと反省し、俺も素直に謝った。


若い男はゆるっと顔を上げた。

「倉橋拓斗(たくと)です、よろしく」

彼は苦笑を浮かべて名乗り、俺に向かって右手を差し出した。


「よろチクビ」

よろしくされる筋合いなんかないけど、一応、挨拶を返して差し出されたそれを握った。


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