ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】
「気にすんなって。俺とお前の仲だろ?」

バシン、と。厚みのある手の平で右肩を叩かれた。むしろそれは、『殴られた』と表現した方がしっくりなほどの衝撃。脱臼してないか心配。


「いえ、遠慮とかでは決してないですから。僕と谷口さんの仲じゃないですか、遠慮なんかしないですってー」

無理矢理に愛想笑いを浮かべて言ったけど、内心はものすごく必死。

早く乃亜ちゃんに会いたい。一日――いや半日の仕事の疲れを癒してくれるのは、こんな粗暴な山ゴリラじゃない。ポッコリしたお腹の愛妻以外に有り得ない。


「お前に訊きてぇことがあんだよ。いいから来い」

威圧的な口調でそう言って、谷口さんは俺の腕を掴んで引く。

短気なゴリラは早くも強硬手段に出た。けどこの人確か、ネゴの研修も受けてんじゃなかったっけ?


とそこへ、またしてもここに似つかわしくない物騒な男登場。いかにも理系って感じの顔に黒縁メガネ、スーツのジャケットボタンは全部、きっちり留められている。


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