ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】




電車通勤の俺は、満員電車に揺られていた。乗車率200パー超えてんじゃね? ぐらいのぎゅうぎゅう詰め、隙間なんか少しもない。それどころか、身動ぎ一つできやしない。

何でか知らないけど、鼻の横がむずむずと痒くなった。けど掻けない。

掻けないと思うと余計に痒い。生き地獄だし、これ。


そんな中、

「もう! 触らないでよ、最低!」

女の甲高い声が車内に響き渡った。


今のこの状況、誰かの手が誰かの尻に触れても、当然といえば当然だ。仕方ないような気がする。

その声は妙に近くから聞こえたけど、自意識過剰な女の被害妄想が炸裂か、などと他人事みたいに思っていた。


が、ふと、胸の辺りから俺を見上げている視線に気付く。見れば、女がものすごい形相で俺を睨んでいた。


不穏な空気を感じて、思わず逸らしてしまった視線は意味なく空を彷徨った。


< 4 / 172 >

この作品をシェア

pagetop