ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】
「あ、目、逸らした。やっぱりだ。私の胸やアソコ触りまくりやがって。この変態っ!」


思わず彼女を二度見した。何度見たところで、被害妄想女の目線は、間違いなく俺にロックオンされているわけだけども。


「えっ、俺?」

仕方がないから訊き返す。

未だ信じられない。この状況で痴漢行為に及ぶヤツがいることが。いやそれ以上に、俺が痴漢呼ばわりされるとか、意味がわからない。


「チンカス! 下衆野郎! 黙って耐える女ばっかだと思ったら大間違いだからね? 警察に突き出してやる」

ち、ちんか……。


「待てよ。誤解じゃね? 俺は何も……」

だいたい俺、お前みたいなケバケバしい女、全然好みじゃねぇし。


「痴漢するヤツはみーんな、そうやって白切るんだよ。『手が当たっちゃっただけじゃん。何この女、自意識過剰じゃねー?』みたいなこと平気で言いやがる。ほんっとクズだな、お前」

女の妄想の、余りの壮大さに俺、絶句。


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