ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】
「この人痴漢! 痴漢です!」
身体の自由が利かないから、女は顔だけを、まるで周囲を見回すように左右に動かし『痴漢』を連呼する。ふざけんなよ、まじで。
周りのやつらが、俺と妄想女に注目しているように感じる。でもそれを確かめる勇気なんか持ち合わせていない俺は、喚き散らす小柄な女を、うんざりした気持ちで見下ろしていた。
とその時、
「毎度、ご乗車ありがとうございます」
唐突に、車掌のアナウンスが流れ始めた。乗っている列車は急行だから、次の停車駅までは随分と時間があるはずだ。
そこに居合わせた誰もが、俺と同じような違和感を抱いたようで、車掌の次の言葉を耳を澄まして待った。
迷惑な妄想女も例外ではなく、突然に押し黙って、不思議そうに天井を仰いだ。
「お客様にお願い申し上げます。当列車は安全確認のため、次の駅で臨時停車致します。扉が開きましたら、入口付近の方から順にお降りください。ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんが、ご協力くださいますよう、よろしくお願い致します。
尚、確認作業が終了致しましたら……」
身体の自由が利かないから、女は顔だけを、まるで周囲を見回すように左右に動かし『痴漢』を連呼する。ふざけんなよ、まじで。
周りのやつらが、俺と妄想女に注目しているように感じる。でもそれを確かめる勇気なんか持ち合わせていない俺は、喚き散らす小柄な女を、うんざりした気持ちで見下ろしていた。
とその時、
「毎度、ご乗車ありがとうございます」
唐突に、車掌のアナウンスが流れ始めた。乗っている列車は急行だから、次の停車駅までは随分と時間があるはずだ。
そこに居合わせた誰もが、俺と同じような違和感を抱いたようで、車掌の次の言葉を耳を澄まして待った。
迷惑な妄想女も例外ではなく、突然に押し黙って、不思議そうに天井を仰いだ。
「お客様にお願い申し上げます。当列車は安全確認のため、次の駅で臨時停車致します。扉が開きましたら、入口付近の方から順にお降りください。ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんが、ご協力くださいますよう、よろしくお願い致します。
尚、確認作業が終了致しましたら……」