ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】
会話は一通り終わったはずなのに、初音は中々立ち去ろうとしない。
開いた窓から初音の顔を窺い見る。『まだ何か?』と目だけで問えば、初音は一度目線を落とすも、すぐに俺を真っ直ぐ見詰めて言った。
「辻岡を……必ず見つけてください」
「はい。最善を尽くし……」
「約束する。このオニギリの名に懸けて」
那智は既に半分ほどの大きさになった手作りのそれを掲げ、意味不明なことを自信満々に言い放った。
「ぷっ……ふふっ」
だがしかし、初音にはウケたようだ。彼女は顔を逸らして俯き、口元を手で覆った。肩がふるふる小刻みに動いている。
ひとしきり声を殺して笑うと、初音は顔を上げて再び俺たちを見る。こちらに惜しみなく向けられた笑顔は可憐。
「頼もしいわ」
その言葉に嫌味は微塵も感じられず。
「じゃあ、これで」
別れを告げて那智をちらと見れば、呆気にとられたような顔をしていてその目線は初音に釘付けだった。
開いた窓から初音の顔を窺い見る。『まだ何か?』と目だけで問えば、初音は一度目線を落とすも、すぐに俺を真っ直ぐ見詰めて言った。
「辻岡を……必ず見つけてください」
「はい。最善を尽くし……」
「約束する。このオニギリの名に懸けて」
那智は既に半分ほどの大きさになった手作りのそれを掲げ、意味不明なことを自信満々に言い放った。
「ぷっ……ふふっ」
だがしかし、初音にはウケたようだ。彼女は顔を逸らして俯き、口元を手で覆った。肩がふるふる小刻みに動いている。
ひとしきり声を殺して笑うと、初音は顔を上げて再び俺たちを見る。こちらに惜しみなく向けられた笑顔は可憐。
「頼もしいわ」
その言葉に嫌味は微塵も感じられず。
「じゃあ、これで」
別れを告げて那智をちらと見れば、呆気にとられたような顔をしていてその目線は初音に釘付けだった。