ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】
「少々お時間頂けますか?」

「ええ、構いませんけど」

彼女は渋々といった感じで同意し、傍にいた若い男性職員に「これお願い」と伝えると、薬局を後にした。そうして案内されたのは、無人の会議室だった。


「昨日も刑事さんがみえて、知ってることは全部お話ししましたけど」

彼女は部屋の扉を閉めるなり、そう言った。


「ええ、そうですよね。でも新たに確認したい事項が出て来まして、申し訳ありませんが……」

「悦子さんに恋人は?」

俺が順を追って情報を聞き出そうとしているのに、那智が脇から口を挟んだ。思わず出そうになった舌打ちを、ぐっと堪えて口を結ぶ。


女性は微かに眉根を寄せた。

「それも昨日刑事さんに……」

「重複してたらすみません。ですけど大切なことなので再度確認したいんです。恋人はいたんですか?」

那智は相手の言葉を遮って、語気を強めて問う。



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