ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】
「いなかったと思います」
「『思います』?」
俺が確認するように訊き返せば、
「はい。本人にはっきり尋ねたことはありませんから。大して親しくもないのに、そんなこと聞きづらいじゃないですか」
女性は躊躇いがちに答えた。
「29歳。確かに、そういうことは訊き辛い年齢ですよね」
「は?」
那智の無遠慮な言葉に、彼女は目を見開いて那智を見た。那智は「ん?」と、『俺、なんか変なこと言った?』的なとぼけた表情で彼女を見詰め返す。
「『親しくなかった』ってことは、あなたは悦子さんのことをあまり良く思っていなかった?」
妙な空気を拭払すべく、話題を少し変えてみた。
「とんでもない!」
彼女は驚いたように目を丸くして否定した。
「東郷さんは、他人から嫌われるような人じゃありません。仕事熱心で、誰に対しても平等で。新薬の説明会や、勉強会にも積極的に参加されていて、医師や看護師からも頼りにされていました」
「むしろ、あなたは彼女に好意を持っていた。他の職員も?」
「ええ、そうだと思います。ここで、彼女の悪口なんか聞いたことありませんから」
「そうですか」
「『思います』?」
俺が確認するように訊き返せば、
「はい。本人にはっきり尋ねたことはありませんから。大して親しくもないのに、そんなこと聞きづらいじゃないですか」
女性は躊躇いがちに答えた。
「29歳。確かに、そういうことは訊き辛い年齢ですよね」
「は?」
那智の無遠慮な言葉に、彼女は目を見開いて那智を見た。那智は「ん?」と、『俺、なんか変なこと言った?』的なとぼけた表情で彼女を見詰め返す。
「『親しくなかった』ってことは、あなたは悦子さんのことをあまり良く思っていなかった?」
妙な空気を拭払すべく、話題を少し変えてみた。
「とんでもない!」
彼女は驚いたように目を丸くして否定した。
「東郷さんは、他人から嫌われるような人じゃありません。仕事熱心で、誰に対しても平等で。新薬の説明会や、勉強会にも積極的に参加されていて、医師や看護師からも頼りにされていました」
「むしろ、あなたは彼女に好意を持っていた。他の職員も?」
「ええ、そうだと思います。ここで、彼女の悪口なんか聞いたことありませんから」
「そうですか」