ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】
悦子は職場の人間と親密な交流はしない、というスタンスで勤務していた。中高生ってわけじゃないし、特に不自然でもないか。


「薬局長との関係も良好でした?」

「それはどういう……」

俺の質問に対し、彼女はおずおずと聞き返す。


「いえ、特に深い意味はありません。悦子さんが、身だしなみのことで薬局長に度々注意されてたって聞いたんで」

「ああ……それは……。メイクのことですよね?」

「はい」

「東郷さん、右頬に痣があったんです。生まれつきだって言ってました。それを隠そうとしてファンデを濃く塗ってたみたいです。以前、『ファンデだけ濃いのはおかしいから、どうしても全体的に濃くなっちゃうのよね』って話してくれたことがあります」

「薬局長はそれを知らなかった?」

「知ってると思います。ファンデ濃くても完全には隠しきれてなかったし……」

痴漢呼ばわりした女の頬に、痣なんか無かった。



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