ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】
「話変わりますけど、」

那智の唐突な話題転換に、またとんでもないことを言い出すんじゃないかと、俺は自然と身構えた。


「半年前まで、辻岡昴って医師がこの病院に勤めてましたよね?」

「ええ。彼が何か……?」

「辻岡と悦子さんの関係は?」

「えっ?」

その質問の意図が全くわからないらしく、彼女はポカンと口を開けて那智を見詰めた。

自分の知りたいことだけを、何の前置きもなしにズケズケ訊く那智に、傍から見てる俺の方が冷や冷やして、どうにも居心地が悪くなるこの不思議。


「辻岡先生が、事件に関わっているんですか?」

「いえ、そういうわけでは……ただ……」

「全てを疑ってかかるのが俺たちの仕事ですから」

またしても俺の言葉は、那智によって途中で遮られた。


「ああ、そうですよね」

彼女は苦笑と共にそう言い、

「二人はごく一般的な医師と薬剤師の関係だったと思います」

なんら迷うことなく答えた。



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