ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】
「それ以上でもそれ以下でもない?」

「ええ。信頼し合ってる感じでしたけど、親密な雰囲気は一切なかったです」

「辻岡の女性関係についてはどうですか?」

「あれだけ素敵な方ですから、もちろん、言い寄る女性はたくさんいましたけど、慣れてるんでしょうね、いつもさらりとかわしてました」

「好きな人か恋人がいたんでしょうか?」

「さぁ……それは本人しかわからないことじゃないですか?」

「ご尤もです。ご協力ありがとうございました」

淡々と質問を重ねてきた那智は、訊きたいことを全て出し切ったのか、さっさと会話を切り上げようとする。

いや、まだだ。


「もう一つ、」

那智に向かって軽く会釈しながら会議室を出ようとする彼女を引き留めた。


「辻岡医師が退職した理由は何ですか?」

俺の問いに、彼女は露骨に表情を曇らせた。困ったように目線が揺らぐ。



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