ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】


三上薬局長のピッチ(PHS)に連絡してもらい、直接会って彼にも話を聞いた。小柄のでっぷりした胡散臭い男で、近寄ると酸味を帯びた異臭がツンと鼻を突き刺す。

だから俺たちは、彼から適度な距離を取った。


悦子の身だしなみについて厳しく注意していたことについて尋ねると、

「TPOですよ、刑事さん」

三上は何故だか得意げに答えた。というかふてぶてしい。厭らしい。憎たらしい。分厚い唇はだらしない印象を受け、それが歪な弧を描くのが気持ち悪くて嘔気を催した。


「ケバい化粧がしたいなら、プライベートですればいい。それかキャバ譲にでも転職すればいいんだ。医療現場には相応しくない。刑事さんもそう思いませんか?」

どこか媚びるように同意を求められて、一瞬戸惑う。

むしろ不潔で悪臭撒き散らしている方が、医療現場には相応しくないし、殊更迷惑だと思うんですけど。


「看護師やドクターにも派手なメイクの女性はたくさんいますよね?」

さきほど話を聞いた薬剤師の彼女の言葉を、そのまま口にする那智。

三上は不満げに眉根を寄せた。


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