ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】
ジャケットの内ポケットから身分証を取り出して、女の面前に晒した。

そういやまだ、相談センターのやつ貰ってないから、身分証は組対課(組織犯罪対策課)のままだ。まぁいっか、別に。


途端、女は有り得ないぐらいに目玉をひん剥いた。カールした人口睫毛が、瞼の上に突き刺さってますけど、大丈夫ですか?


「けい……じ?」

「そうですけど?」

嘘ですけど。


「だったら尚更、こんなことバレたらまずいんじゃないの?」

「まずくねぇよ? だって俺、無実だもん」

「ああ、わかった。あんた、私みたいなのがタイプなんでしょ? ねっ、そうでしょ?」

「お前……妄想も大概にしとけよ。第一俺、お前なんかぜんっぜん(全然)……」

しゃべってる途中なのに、女の左手が俺の頭に伸びてきて、がしと髪の毛を鷲掴まれた。そうしてそのまま、ぐいと引き寄せられる。

背伸びしたらしく、女の顔がぐうんと近付いて来て……。


不可抗力だったんだ。俺は悪くない。


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