鬼部長の優しい手
「あ、俺
自販機でなんか買ってくるけど、
七瀬ちゃん、なんか飲みたいのある?」
「私はいいよ。ありがとう」
少しイライラしながら、
山本と七瀬の会話に耳を傾ける。
だ、か、ら!
馴れ馴れしいんだよ、山本。
というか距離近すぎだろ。
あんな近づく必要あるか?
やめよう。
こんなこと考えてたらきりがない。
…七瀬も迷惑だろう。
俺はイライラする気持ちを抑えながら、
目の前の書類を片付けようと、
仕事モードに切り替えた。
「そう?
あ、黛実ちゃんはなんかいる?」
山本は七瀬から視線を外し、
今度は笠野にそう聞いた。
「じゃあ、無糖のコーヒーと果汁100%のオレンジジュースとコーラ」
「ちょ、多いよ!せめて二個にして!」
「嫌よ。飲み物くらいいいじゃない。
ちっちゃい男ね。」
「そう言われれば、なにも言い返せないけど!」
と、笠野の返しに、
声をあらげる山本。
…この流れだと、俺も聞かれそうだな。
書類に向かいながらそんなことを考える。