鬼部長の優しい手



「あ、俺
自販機でなんか買ってくるけど、
七瀬ちゃん、なんか飲みたいのある?」


「私はいいよ。ありがとう」



少しイライラしながら、
山本と七瀬の会話に耳を傾ける。




だ、か、ら!

馴れ馴れしいんだよ、山本。
というか距離近すぎだろ。
あんな近づく必要あるか?





やめよう。
こんなこと考えてたらきりがない。


…七瀬も迷惑だろう。






俺はイライラする気持ちを抑えながら、
目の前の書類を片付けようと、
仕事モードに切り替えた。






「そう?


あ、黛実ちゃんはなんかいる?」




山本は七瀬から視線を外し、
今度は笠野にそう聞いた。



「じゃあ、無糖のコーヒーと果汁100%のオレンジジュースとコーラ」

「ちょ、多いよ!せめて二個にして!」


「嫌よ。飲み物くらいいいじゃない。
ちっちゃい男ね。」


「そう言われれば、なにも言い返せないけど!」





と、笠野の返しに、
声をあらげる山本。




…この流れだと、俺も聞かれそうだな。




書類に向かいながらそんなことを考える。





< 104 / 188 >

この作品をシェア

pagetop