鬼部長の優しい手




「部長も、なんかいりません?」


ほら、きた。



まぁ、答えはもう決まってるから





俺は焦ることなく、
用意していた言葉を山本に向ける。



「俺はコーヒーを4つ。
あ、無糖のやつな。」


「4つ!?


え、4つ!?
黛実ちゃんより多いんですけど!?
しかも、コーヒーのみで4つ!?」



これまた予想通りの山本の反応。

大袈裟に驚いてみせる山本が
少し可笑しくて、自然と口元が緩む。





「残業の眠気覚ましには
カフェインが一番だろ。」


「そうですけども!」



「じゃあ頼むぞ。

行ってこい」





俺がそう言うと、山本は
“わかりました、行ってきますよ~!
4つですね、4つ!!”
と、ぶつぶつ文句を言いながらも、
部署から少し離れた自販機へと向かっていった。






…なんか、ちょっと
イライラが収まった。


山本は七瀬のそばから離れたし





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