鬼部長の優しい手



「只今戻りましたーっ!

で、戻ってきて早速なんだけど
誰か手伝って!さすがに缶を一人で
七本持つのは辛い!」



笠野と俺との間に漂う重たい空気を
山本の明るい声が切り裂いた。



戻ってきた山本は、
俺の言った通り、コーヒーを四本と、
笠野が頼んだオレンジジュースと
コーヒー、コーラの計七本の缶を
抱えていた。





「…って、あれ?
七瀬ちゃんは帰っちゃったの?」


「…ああ」



「んー?何々?


黛実ちゃんも部長も、どうかしました?
なんか、すごい怖い顔になってますけど」






山本はそう言うと持っていた飲み物を
机の上に一つ一つ並べていった。





…空気を読めよ山本。
異様な雰囲気なのは見ればわかるだろ
そんなにへらへら笑うな。



と、行き場のないイライラを
理不尽に山本にぶつける。




「…私、帰りますね。
もう今日の分は終わりましたし。


山本、これありがとう。
帰って飲むわ」





俺がなにも出来ず固まっているうちに
笠野は、さっさと帰り支度をして、
出ていってしまった。





「本当に、何があったんですか?
まぁ、予想はつきますけど。


七瀬ちゃん絡みっすか?」







…笠野といい、山本とといい、
なんでこんなに鋭いんだよ。
俺が分かりやすいだけか?





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