鬼部長の優しい手




「お前には関係ないことだ。
気にするな。


コーヒーありがとう、
お前も、もう帰れ」



これ以上部下に情けない姿を
見られるのは御免だ。

俺は感情を悟られないように、
できるだけ冷たい口調でそう言った。




「部長冷たいですよー!
教えてくれたっていいじゃないですか。

ここには、もう俺と部長しか
居ないんだし、男同士での秘密は
俺、絶対守りますよ?」



「なにが秘密だ」


「痛っ」

やけに楽しそうにそう言う山本の
頭を力一杯、叩いてやった。








「まぁ、でも部長、
俺らも本当気づけばもういい年ですよ。
学生時代とはわけがちがう。



わかってんですけどねー、俺も。
行動しなきゃ始まんないなって。」




山本は大袈裟に頭を抱えて痛がったかと
思うと、今度は遠い目をして、
笑いながら、でも真剣に
そんなことを言い出した。





…行動しなきゃ始まんない。
そうだよなー…
俺だってわかってるんだよ山本。


と言うか俺、今日何回
“わかってる”って言ってんだ。





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