鬼部長の優しい手
少し前から片付けはじめた部屋。
荷物を段ボールに詰めるたびに、
“本当に山本と一緒に住むんだ”って
実感がふつふつと沸いてくる。
「いや、本当もう、
俺幸せすぎて死にそう。」
山本と同棲するんだな、と
しみじみと感じていた私の横で、
山本はにやにやと笑いながら
そんなことを言ってきた。
「なによ、急に。そんなこと言って
にやにやして。気持ち悪い」
「相変わらず冷たいんだから。」
気持ち悪いと睨む私をよそに、
山本は尚も、へへっとだらしなく笑う。
…そんな幸せオーラ出さないでよ。
たかが同棲でしょ?一緒に住むだけよ?
なのに、でれでれしちゃって。
やめてよ、なんかこっちまで恥ずかしくなってくる…。
「…顔がだらしない。
まぁ、そのバカっぽいところが、
山本らしくていいと思うけど?」
「なんか、さらっと酷いこと言われた気がするけど、気にしない!
俺、今すごい幸せだから。」
そう言って、またにやにやと笑って、
私と色違いの黒のマグカップに口をつける山本。
…やめてよ、なんか、
調子狂う。