鬼部長の優しい手
「七瀬、俺が…
恐いか?」
「え…っ、いやそんなことは…」
俺の言葉に、七瀬は戸惑った顔をする。
そんな顔、
”恐い“って言ってるのと同じだぞ…
そんなことを思いながら、
俺はフッと笑みをこぼす。
「七瀬、遠慮なんかしなくていいから
言ってみろ」
俺はできるだけ優しく、子供を
あやすように七瀬にそう言った。
「失礼を承知で言いますと…
正直、怒っているときの部長は
すごく恐いです…」
やっぱり…
通りでいつも七瀬がビクビクしていると…
そんなに、怒ってたのか…?俺
少し自己嫌悪に浸っていると
七瀬がまた口を開いた。
「確かに、さっき言った通り
怒っているときの部長は恐いですが…
誰よりも仕事を頑張っていたり、
誰よりも部下のことを考えてくださっていたり、
そんな普段の部長は、
素直にすごいなって思います」
七瀬はそう言って
ニコッと微笑んだ。