鬼部長の優しい手
食事会と二人きりの帰り道
「ぶ、部長だって行きたかったと思うよ…?」
「そ、そうよ!部長には
きっと外せない用があったのよ!」
少しこ洒落た、今時珍しい
七輪を使った焼肉屋。
ひきつったぎこちない笑顔で
私を励ましてくれる、山本くんと黛実。
でも、私はべつに…
「部長が来なかったからって
落ち込んでるわけじゃ…」
「そんな、死んだような顔して
よく言うわよ…」
人より少し長いまつげを揺らし、
呆れた表情をしながら、黛実は“はぁ…”とため息をついた。
な、なに!?そのため息!
って言うか、死んだような顔って…
私そんなあからさまに、落ち込んだ
顔してたのかな…
「…そんなにひどい顔してる…?」
「そりゃあ、もう。
眉なんかハの字に下がっちゃってるし、
目なんか今にも涙が流れそうなくらい
うるうるしてるし、
誰が見たって。“大丈夫?”って
聞いちゃうくらい、ひどい顔してるよ」
そう言った山本くんも
眉がハの字になっていて、
どこか悲しそうな顔をした。