鬼部長の優しい手
「あ、あの、部長
私の家もう近くですから、ここまでで
大丈夫です。
わざわざ送っていただいてありがとうございました」
緊張と不安で、その言葉は少し
震えていた。
「え?いや、でも、せっかくだし
家まで送って…」
「だ、大丈夫ですから!
じゃあ失礼します…!」
ダメだ、今部長の顔見たら、
絶対泣いちゃう。
私を引き留めようとする部長の声は
聞こえないふりをして、
私は一度も振り返ることなく、走った。