鬼部長の優しい手
「…っ!」
怖くて声も出せない。
そんな私をよそに、
部長は私の手から奪うように写真立てを
取った。
こんな部長、見たことない…
顔をしかめて、
必死に苦痛に耐えてる
そんな表情…
なんで、こんなことに…っ
私…なんで…
“塚本が好きなら、
塚本をつかまえて。 アイツの手を掴んだら、
決して離しちゃだめ。
七瀬、私と約束して。何があっても、
塚本のそばにいるって”
戸惑いながら、冷や汗をかいていると
ふと、以前の香澄先輩の言葉が浮かんだ。
そうだ。
私は約束したんだ香澄先輩と。
なにがあっても部長の手を離さない、
って。
「…勝手に動き回って、
勝手に写真を見て、本当にすみませんでした」
「謝罪なんていいから、
出ていけ、早く!」
「…っ」
なにも寄せ付けないような、
部長の力強い声に体が強ばる。
…けど、ここで引いちゃだめ。