鬼部長の優しい手
「…聞いちゃ、だめですか?」
「なに言って…っ」
「その写真に写る女性は、
紗耶香さんですか?」
絞り出したような私の声は、
きっと相当震えていた。
…お願い部長、答えて…。
私は心のなかでそう祈り、
拳をぎゅっ、と握りしめる。
「お前には関係ないことだ。
…どうせ間山になにか言われたんだろ
紗耶香のこと。」
落ち着いた冷ややかな声が
私の体を、よりいっそう恐怖で
震わせた。
…部長、気づいてる。
香澄先輩に紗耶香さんのことを
教えてもらったって。
怖い怖い。
睨み付けてくる部長が怖い。
部長に拒絶されるのが怖い。
冷や汗は滲んできて、
涙も溢れそうになってくる。
でも、
「…知りたいんです。部長を
全部。」
お願いです、部長…
「一人で全部、抱え込まないでください」