鬼部長の優しい手
それでもでてくる言葉は、
七瀬に対する謝罪の言葉で
違う、違うんだ七瀬。
泣かせたかったわけじゃない。
傷つけたかったわけじゃない。
…ただ、七瀬のそばで
これからも、上司として…
上司として…なんなんだ?
ああ、ダメだ。
あいつのこと考えてると
疑問がつきない。
「とりあえず、
山本が置いてった書類に
目を通しておくか。」
七瀬のことを考えていると、
俺のデスクの前に立っていた山本は
さっさと居なくなっていた。
今は、いつも通り、真剣な顔つきで
パソコン画面に向かっている。
…普段はふざけた性格してるくせに、
本当、仕事はうらやましいほど
よくできる。
…あいつなら、
女心とか言うやつも
よく、わかるんだろう。
32になったおっさんの俺には、
女心を理解できる能力なんて、
皆無だ。