恋愛なんて、めんどくさい。
「あ~、あたしあそこでは坂下店長の親戚の“坂下美玲”って事になってるから。でもお客さんみんな酔ってるから娘って勘違いしてんじゃん?」
何故美玲かと言うと店長の名前が“坂下美咲”だからだそうです。(決してあたしが付けたんじゃないから、ソコんとこヨロシク)
「名前まで変えてんだな…。」
「念には念を入れなきゃ。」
バレてクビになってここを追い出されても、あたしには行くところなんてない。
「なぁ。答えたくないならいいんだけど…。そこまでして独り暮らしする理由って、何かあんの?」
おそるおそるってゆーか。
ためらいがちに、でも真剣に、訊いてくる深宮。
「…なんで?」
「うなされてた…から。疲れてんのかなって…。」
ああ。
「寝言でも言ってた?」
「…言ってた。」
そっか。
もう前みたいに誤魔化せない…いや誤魔化す必要も無い。
「弟にも言われた。『お姉ちゃん夢の中でも謝ってるの?』って。」
「夢の中でも…?」
「理由ってほどじゃないけど、ま、ちょっとした昔話。聞いてくれる?」
「…おう。」
「んじゃ、出来るだけ手短に話せるよう心がけるね。」
あたしは話し始めた。