恋愛なんて、めんどくさい。
「確かに正しくねぇな。
“あたしだけの深宮”じゃなくて“俺だけの柊”だろ?」
「え…」
「“あたしの彼氏”じゃなくて“俺の彼女”な。」
「…上から目線。」
「お互い様―。で?返事は?」
「返事?そんなの…、ってなんであたしが答えることになってんのよ。」
「まーいいじゃん♪それよりほら、そんなの…、の続きは?」
なーんか腑に落ちないけど、
「そんなの…、
『はい』以外ないじゃん!」
深宮が彼氏になるんなら、いいや。
「そっかそっか♪じゃー、これからヨロシクな?“俺の彼女”♪」
「こちらこそヨロシクね?“あたしの彼氏”♪」
「いやいや、ソコは“俺の柊”だから。」
「いやいやいや。ソコは“あたしの深宮”だから。」
「俺のだって」
「あたしのだよ」
「俺のだろ」
「あたしのだってば」
…何コレ?
「ぷっ」
「ふっ」
馬鹿みたい…、ってか馬鹿だ。
こんな馬鹿馬鹿しい事で顔見合わせて笑えるんだから。
今までみたいに時間の無駄、って切り捨てる事なんてもう出来ないね―――、…あれ?
時間?時間…
「時間!」
遅刻するかも。
「ヤバいの?」
「ヤバい」
「んなら急ぐぞ!」
スゴい勢いで教室を出てった深宮の後ろ姿を見ながら、
―ごめん嘘。
ホントはそんなヤバくない。
ただ深宮と二人乗りしたかっただけ―
…なんて思ったのは秘密とゆーことで。