恋愛なんて、めんどくさい。

と言って、手首を掴んでた手を離した―――、と思ったらそのままあたしの手を握って指を絡ませる。



俗に言う『恋人繋ぎ』ってヤツですか？


「…慧？」


「んー？」

何食わぬ顔してゆっくり歩いてる(多分あたしの歩幅に合わせてくれている)慧の隣を歩きながら


「手、離して。」

小さく抗議する。


「ダメ。」


「…なんで。」


「ほっとくと誰かさんがまたコケるから。」


「まだコケてないし！…ってゆーかもうコケないから！」

これ以上いらない緊張はしたくないの！という気持ちを込めて振りほどこうとしていると


「手ぇ繋ぐのそんなに嫌？」


急に足を止めて捨てられた子犬みたいな目で見つめてきた慧。


咄嗟に、嫌じゃない、と言おうと口を開きかけて一旦閉じる。

冷静になれ。前にもこんなことあったじゃないか。


これに騙されてはいけない…、乗ってはいけない…、
嵌められてはいけない…、



「……………嫌。」

よし言えた！…時間かかったけど。


「…そっか。」


いかにも落ち込んでます感を出しつつも、あっさり引き下がった慧。