恋愛なんて、めんどくさい。
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「…と言うわけで、こんな感じで寧々ちゃんがウチで働く事になったってワケよ。」
「はぁ…。」
「その後も大変だったのよ~!次の日来た寧々ちゃんは前の日と別人になってたし。思わず『あなた誰?』って聞いちゃったわ~。」
だって若い頃の私ソックリだったのよ、と店長さんは懐かしそうに笑った。
「そしたら寧々ちゃん『親戚ということで店長さんに寄せて見ました。そういえば名前、どうなりましたか。』って。…気が付いたら、美玲。あなたは坂下美玲って口が勝手に動いてた。」
「なんで『美玲』なんすか?」
「…娘の名前、なの。3歳の時交通事故で亡くなったわ。」
寂しそうに目を伏せる店長さん。
「すいません、その立ち入った事聞いてしまって…。」
「いいの。ただ寧々ちゃんには内緒ね。…生きてたらちょうどこのくらいの歳で、こんな感じだったのかな、ってつい思っちゃって。寧々ちゃん、家族の話どころか自分の話もろくにしてくれないんだもの。辛うじて知ってるのは、名前とケータイ番号、メールアドレスと高校生だってことだけ。…それだって話の流れでポロッと出てきたのを追及しただけだったのよ?」