気まぐれな君も好きだから
そんなこんなで、異動して一週間も経たない頃、事務所でタイムカードを押していると、仁科君が階段を上がって来た。



「歩未さ〜ん、お昼これから?」

「うん。」

「じゃ、一緒に行きましょう。」



ふと見ると、仁科君の後ろにもう一人、知らない男の子がいる。

白衣じゃなくてグロサリーのジャンバーだから、加工食品? 八百屋さん?

名前もわからないから名札を見ようとしたら、視線を感じ、しっかり目が合った。



うわぁ、カワイイ.......

吸い込まれちゃいそうなキレイな目をした男の子は、とても優しい表情で私に微笑みかけた。

思わずキュンとしちゃったのをゴマかすように、焦って、とりあえず名前を聞いてみる。



「え〜っと、何君?」

「日配食品の片瀬です。」

「ハル君でいいよ、ハル君で。」

「何でだよ。」

「だって、みんなにそう呼ばれてんじゃん。」

「そうなの?」

「いや、まぁ......そうっちゃ、そうなんですけど。」



モゴモゴしている様子がまたカワイイ。

パートさん達に「ハル君」って呼ばれてるのが、目に浮かぶ。
< 10 / 243 >

この作品をシェア

pagetop