気まぐれな君も好きだから
転ばなくて済んだのは、傘を持つ古谷君の腕に私が掴まっていたから。

そして空いている古谷君の右手が、咄嗟に私の腰を抱きかかえてくれていたから。

転んだことにも驚いたけど、それよりもむしろそっちがドキドキを急加速させ、すぐそばにある古谷君の顔を直視できない。



「ビックリした。.......ありがとう。」

「気をつけろよ。」

「うん.......。」



古谷君に支えられて何とか転ばずにいる格好から、自分の足でちゃんと立っている状態に戻りながら、言葉を探す。

この後、何て言ったらいいのかな..........



「ねぇ、ちょっとだけ、手、離して。」

「手?」

「傘、閉じてもいい?」

「うん.......。」



って、ん? あれ?

言われたように腕に掴まっていた手をすぐに離してはみたけど、古谷君の右手は私の腰に回されたままだ。

これって身体を密着させて、心臓をバクバクさせながらする会話?

だいたい、どうしてこのタイミング?

何か意図があるのかな.........
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