気まぐれな君も好きだから
「認めたくない気持ち」が押し寄せ、また涙が浮かんで来た。

古谷君の肩にもたれかかって顔を隠し、私も背中に腕を回して、しっかりと抱きしめた。



「ごめんね.......。」

「俺こそ、ごめん。ずっと言えなくて........。」

「ううん。私のせいだよ。」

「違うよ。」

「.......違わないよ。」



涙がこみ上げて来て、声が詰まる。

古谷君が私の髪を撫で、頭から包み込むように抱きしめ直す。



「俺がグズグズしてたからだよ。気が付いてたのに.......。」



そうだったの.........

古谷君は、そんなに前から私を見ていてくれたんだ。



だったら尚更、私が悪い。

相手が俊じゃ、古谷君が後から手を出すことは不可能だ。

私が心変わりをしたと正直に言ったとしても、俊の気持ちを考えたら、古谷君が堂々と私と付き合うことは絶対に有り得ない。



良く考えもせず、浮ついた気持ちで返事をしてしまったせいで、こんなにも長い時間、私は古谷君を、俊を、苦しめ続けてしまった。

なのにその罪の重さに気付くのが、遅すぎた。



悔やんでも悔やみきれなければ、これからどうしたら良いのかもわからない。

行き場のない不安をごまかすように、しばらくの間、私は古谷君の胸に、只々しがみついていた。
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