気まぐれな君も好きだから
エレベーターに乗り、ビルの3階にある観覧車の乗り場まで、しっかり恋人繋ぎをして行った。

遥希は朝から変わらず、とっても楽しそうだけど、どうしても古谷君からのメールが気になってしまう私は、気持ちが少しずつそっちに逸れ始めていた。



「ねぇ、ねぇ、何色のやつに乗る? 空いてるから選べるよ。」

「え? .......あ、ごめん。ぼ~っとしちゃった。」

「大丈夫? 歩未も疲れた?」

「うん、そうかも。でも、大丈夫だよ。」



ごまかし笑いしながら、赤い観覧車に乗った。

少し上昇すると、隣に座っている遥希がぴったりと身体をくっつけて来て、恋人繋ぎの手を握り直した。

そして私の肩に頭を乗せ、満足そうに微笑んだ。



その仕草は文句なく可愛いと思うし、頬に当たるフワフワした髪の感触と温かな体温が気持ち良い。

いつもならここでキュンとして、自分からキスしていたかもしれない。



でもその時は違った。

遥希の作り出す甘くて蕩けそうな空気に、何となく浸りきれない。

すぐそばにいる愛しくてたまらないはずの存在に、気持ちを集中し続けることが出来ない。



ベタベタされるのが嫌な訳ではないし、もちろん鬱陶しいとも思っていない。

なのにどこか上の空の私は、まるで感情のない人形みたいだ。
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