気まぐれな君も好きだから
遥希にキスをされても、いつもみたいに身体中に甘い痺れが広がって行かない。

溢れる思いを伝えようとする熱の籠ったキスをもらっても、私が返すのは明らかに気持ちの入っていないキス。

唇は重なっていても、心は遠い所にある。

そんなおざなりのキスに、自分でも違和感を感じずにいられない。



私の気持ちがここにないことに、遥希も何となく気付いてしまったみたい。

何も言わないけど、長いキスを一度だけした後、黙って私の顔を見つめている。

今まで何度も唇を合わせて来た相手には、本気じゃないキスは見破られてしまうのかな..........



「どうしたの、遥希?」

「.......何でもない。」



遥希が悲しい表情を浮かべる前に、自分から抱き付いて、その場を取り繕う。

腰に手を回して横からギュッと抱きしめ、肩に寄りかかって、上目使いで甘えた素振りを見せる。

すると、遥希が安心したように笑顔を浮かべる。

その顔を見て、やっと私も安堵する...........



何なんだろう、このやり取り。

遥希と一緒にいて楽しかったのに、古谷君のメール一つで、こんなに心が揺らいでしまう。

私って、やっぱり最低だ。

どんな時も全力で愛してくれる遥希に申し訳なくて、胸が痛くなって来る。
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