気まぐれな君も好きだから
遥希のあまりに素直な言葉が辛くて、泣きたい気持ちになる。

でもこんな場面で泣いてたら怪しまれるし、せっかくのデートが台無しだ。



グッと堪えて、唇を噛み締め、遥希の胸に顔を埋める。

遥希が、頭からすっぽり包みこむように抱きしめてくれる。

安心するけど、同時に怖くなって来る。

私はこんなに優しい男の子を、自分のわがままのためだけに欺いている。

ただでさえ遥希は、叶わないことを前提に、報われない愛を一生懸命注ぎ続けてくれているのに........



「何か、あった?」

「.........。」

「俺に話せることじゃないのかもしれないけど、歩未、最近、何か悩んでるみたいだから.......。」

「..........。」

「もしかして.......俺がこうやって、しつこく好きでいるのも関係してる?」

「.......ううん。違う。」

「ほんと?」

「遥希は、そばにいてくれないと困る。」

「..........。」

「でも、そんなの勝手だよね。」

「ううん。全然。」

「なんで? 今のままじゃ、私、遥希と付き合えないんだよ。」

「.......なんでだろうね。それでも、離れたくないんだ。」

「そんなの、おかしいよ。」

「おかしくてもいいよ。だって、そばにいてくれないと困るんでしょ?」

「..........。」
< 120 / 243 >

この作品をシェア

pagetop